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(認定)特定非営利活動法人 シェア=国際保健協力市民の会 シェアは、保健医療を中心として国際協力活動を行っている民間団体(NGO)です。

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本田徹 国難に瀕してー東日本大震災に寄せてー

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かくも圧倒的な悲しみと苦難の前では、言葉そのものがほとんど力を失っているように感じられるのですが、東日本大震災で犠牲となられた3万人にも及ぶと思われるかたがた、ご家族の安否も不明のまま、家も仕事場もすべてを根こそぎ流されて、着の身着のまま避難所暮らしを余儀なくされている何十万人ものかたがた、また原発事故のため住み慣れた我が家からの退避を強いられているかたがたなど、大難に遭われた皆さまに心よりお悔みとお見舞いを申し上げます。


2011年3月11日金曜日、午後2時46分という運命の<とき>は、今後数世紀にわたって、日本人の集団的記憶の中に深く刻み込まれ、語り継がれていくことになるでしょう。三陸海岸沖を震源とするM9.0の巨大地震と、その直後に青森県から千葉県に至る東日本の太平洋沿岸に押し寄せた大津波は、尊く、いとおしい、数限りない<いのち>を奪い、国土や財産は深く広く傷み、日本列島の住民は、原発から吹き上げ漏れ出る放射能の脅威に、長く向き合っていかねばならなくなりました。巨大地震、大津波、そして原発事故。複合的な大災害は、私たちに敗戦以来の圧倒的な試練をもたらしています。


つい先日、私はデビッド・ワーナーさんの名著「医者のいないところで」(2009年シェア発行)の原訳を作ってくださった河田いこひさんから、彼女の個人訳による「チョルノブィリの火 - 勇気と痛みの書」(風媒社2011年)の寄贈を受けました。1986年4月26日午前1時23分、チェルノブイリ原子力発電所4号炉で、実験中に起きた炉心融解の大事故(レベル7)と、それに引き続く大火災で、多くの人命が失われ、今に続く多量の放射能による環境汚染が起きたという一連の悲劇の顛末を、詳細克明に報告した迫真の書で、いまの日本人にこそこの本を読んでもらいたいという発心から、河田さんが独学でウクライナ語を勉強され、完訳されたことに心底からの敬意を覚えます。と同時に、本書の発刊から2カ月足らずで、福島原発事故が起きたという事実に、私は運命的な暗合を感じざるをえませんでした。ウクライナ語の「チョルノブィリ」はニガヨモギのことで、新約聖書ヨハネ黙示録第8章の記述を象徴的にとらえれば、チェルノブイリは予言されていた、という考え方をする人も出てくるのでしょう。しかし、私にはその詮索よりも、チェルノブイリの悲劇の中で、原発事故の被害を最小限に食い止め、同胞たちを救うため、家族や恋人への限りない愛惜をいだきつつ、みずからのいのちを原子の炎に捧げ、死んでいった多数の若い消防士らの勇気と献身に打たれます。彼らはいわば、みずからのいのちと引き換えになることを明晰に意識しつつ、事態のさらなる悪化を防ぐために最善を尽くし、結果として、「原子力多幸症」(原発は完全に安全で、バラ色の未来を実現してくれるという誤った信仰)におかされた「一流の科学者」や政治家たちに、もっとも根源的な痛棒を加えることとなりました。


私たちにもまた、一瞬として、ひるんでいるいとまはありません。とくに、苦難と試練にめげず、眦(まなじり)を決して、暮らしと地域の再建に取り組んでおられる人びとの姿を見るにつけ、直接的な被害を受けなかった市民社会が、連帯の意思を行動で示し、日々の糧すら欠き、健康を脅かされている多くの被災者にすこしでも、物心両面の支援を届け、いのちを守るお手伝いするのは当然のことと言えましょう。


シェアも、3月18日以来第一次隊から三次隊までの派遣を行い、宮城県名取市の桑山紀彦医師(NPO「地球のステージ」代表)が経営する、東北国際クリニック(被災後地元で唯一24時間救急対応をしてきた)への協力を行いながら、三陸海岸地域への調査を実施、3月末からは宮城県気仙沼市内での、在宅ケア、訪問看護活動、小規模避難所支援に、地元の市立病院、市役所保健師、愛媛県医師会派遣チームなどと協力しながら、腰を据えて取り組んでいくことにいたしました。過去の阪神淡路大震災(1995)や新潟県中越地震(2004)での私どもの保健支援活動の経験を踏まえ、プライマリ・ヘルス・ケアが提唱する住民の自主・自決の原則や、地域の多様な資源との協調や協力を尊重しながら、すこしでもお役に立ちたいと念願しています。宿命論に陥らず、理性と合理的なマインドに拠って、人事を尽くし、そこから「善き天命」を引き出せるように頑張っていきたいと思っております。


どうか皆さまの温かいお力添えと参加を、心よりお願い申し上げます。


シェア=国際保健協力市民の会 代表理事 本田徹
(2011.3.31)

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